
Ciao!今回は、実際に詐欺にあったお話です。先日、在イタリア日本国大使館からも注意喚起のメールが届きましたね。
家探し
運良くローマで仕事が見つかり、なるべく早く(遅くとも2025年1月から)入居できる賃貸シェアアパートを探していました。
始めは日本人向けのネット掲示板やイタリア人もよく使うネット掲示板(subito.it, immobiliare.it, Idealista.it, casa.it, bakeca.it)などで探していました。条件についてこだわっていられる状況でもなかったため、良さそうなところには手あたり次第連絡しました。
100件以上連絡しても1件も連絡が来ない、電話しても外国人だとわかると貸せないと言われ全く見つかりません。
ローマに行き1日中歩いて10件以上の不動産屋で尋ねましたが、時期が悪いのか、シェアアパートは全くない・友達と一緒に1件丸ごと借りてはどうかと言われる始末です。最後の手段として、詐欺も多いFacebookの部屋を貸します系の掲示板もチェックしました。
最高すぎる物件がFacebookの掲示板に投稿される

ある日、日課の家探しをしているとローマテルミニ近くに安く、あまりにきれいすぎる物件(アパートの1部屋)が投稿されました。好物件は瞬殺されるため、すぐに投稿者に連絡しました。投稿者の女の子(?)は、すぐに大家のWhatsAppの連絡先を教えてくれ、以降は大家との直接交渉に入りました。
テルミニ駅徒歩15分のワンルームで家具付き月500ユーロ(光熱費込み)の一人暮らし用です。なぜこんな好条件なのかと尋ねると、ローマの大学に通う息子のために購入したが、息子は卒業後地元に戻ることにしたため、きれいに使ってくれる困っている人に格安で貸すことにしたという、もっともらしい回答に親切な人もいるもんだと信用してしまいました。
大家とのやり取り

怪しい点① 内見を断られる
すぐに内見を申し出ると、遠く(リミニ近郊)に住んでいるため、ローマに行くことはできないと言われます。何曜日でもいいし、時間もいつでもそちらに合わせると言っても無理だの一点張りです。
手口① 契約書を作成する
契約書を早速作ってもらったと草案を送ってきました。内容的には問題なさそうな契約書でした。知り合いのイタリア人に確認してもらっても内容は大丈夫っぽいという反応です。
怪しい点② 鍵を渡す前にデポジットを要求する
定番ですが、内見前にデポジットとして1か月分の家賃相当額を要求されました。詐欺の典型的な手口のため、こちらも何度も拒否しましたが、他の人からも連絡が来ているからと言われ、微かな望みをかけて500ユーロを送金してしまいました。
手口② 正式な身分証明書を送ってくれる
やっぱり信用できなかったので、再度アパートの部屋の内部の写真を送ってもらい、大家の身分証明書も要求しました。するとイタリアで発行されているちゃんとしたCIEが送られてきました。(もしかしたら盗品かもしれませんが)この時点で、少し本物かもという淡い期待がありました。
こちらも礼儀として身分証明書を送りましたが、内見できない時点でちょっと怪しいと思い始めていたので、万が一に備えて、たとえ無効になっても大きな支障がないイタリアのCIEの写真を送りました。
怪しい点③ 頑なに部屋番号を示さない
行ったら物件がなかったなんてことも良くある話なので、建物だけでも存在するのか見に行くことにしました。
住所をWhatsAppで尋ねますが、部屋番号に関しては何度も繰り返し聞いても答えようとしません。
聞いた住所には確かに賃貸アパート物件が建っていました。出てきた住人に内見に来たと伝えてアパートの内部に入れてもらいましたが、大家の苗字の表札は確認できませんでした。
怪しい点④ 契約書に署名していないのに公証人のところで契約締結
本来、契約とは両者のサインがあって初めて成立するものです。
おかしいと主張するも問題ないとの一点張り。挙句の果てに法務省発行の公証人のサインが入った領収書(偽造と思われる)を提示して、かかった費用約600ユーロをすぐに送金するように要求されました。
この時点でかなり信用できなくなっていたのですが、払わないと予定している鍵の受け渡し日はなかったことにすると言われました。事前に支払った分はすべてデポジットとして預かるだけだ・契約終了時には返すと言われ、大家が住んでいる設定の県の正式な押印っぽい印もあったことから渋々、指定金額を送金しました。
(この間にもかなり細かい条件の確認についてのやり取りが続いています)
怪しい点⑤ イタリア語に違和感がある
やり取りが長くになるにつれて、イタリア人だと間違うはずがない活用の間違いや、生粋のイタリア人であれば使わないような言葉遣いが現れるようになってきました。また、第3者が書いたと思うような違和感も感じるようになりました。
確信

1.住民登録には県職員の派遣費用が掛かると言われる
住民登録のためには、市役所職員の立会いの下、物件内の家具賃貸リストを作成する必要があり、そのための派遣費用が掛かると言われました。
何度か住民登録をしていますが、市役所職員の派遣なんて一回もないですし(警察官による居住確認はあります)、登録費用は完全に無料だと知っています。
2.内見写真をGoogle Lensにかけて検索
大家から貰った写真をGoogle Lensにかけて検索しました。
特徴的な絵が飾られていたこともあり、すぐにヒットしました。フランス・パリにある賃貸アパートで月10000ユーロの物件です。
翻訳機を使いながら、フランスの不動産会社にローマの大家から貰ったローマにある物件の内装と同じだけど、本物ですか?どういうことでしょうか?と質問しました。不動産会社もびっくりして確認するとすぐに返事をくれました。翌日に、写真は確かにパリにある物件で間違いない・このローマの物件は詐欺だから気を付けて!と回答が届きました。
写真をかなり注意深く見ると、外から見た窓と部屋の窓の位置関係や採光に若干に違和感があります。ただし、これは中庭に面した部屋の場合は参考になりませんね。
また、バスルームの写真には、見えにくいのですが、イタリア特有のビデがありませんでした。イタリアの物件においては、これも一つの手がかりになるかもしれません。
3.収入印紙(Marca da Bollo)の偽造
契約書は税務署(Agenzia delle Entrate)に登録する義務があるため、大家にその登録受領証を要求しました。以前に不動産屋と賃貸契約を結んだことがあるため、受領証のフォーマットは知っています。
受領証に貼ってあった収入印紙は滞在許可証申請時に見慣れたもので、大きさやデザインが現在のものと違います。
収入印紙は税務署のHPで発行日などが確認できることを知っていたため、確認してみました。
番号を確認してみると10年前に発行されたとする結果でした。
4.税務署(Agenzia delle Entrate)に賃貸契約書が登録されているか確認してみた
大家の主張によると、締結された賃貸契約書は私の名前で税務署に登録されたそうです。
万が一、契約書が正式に税務署に登録されていた場合、こちらの占有権が主張できます。そのため、念のため契約書が登録されているか確認しました。
公式サイトの確認用ページからは確認できなかったので、PECで登録されたとされる税務署に直接質問しました。
回答は期待していなかったのですが、比較的すぐに私の名前でこの年に登録された契約書はないとの回答が届きました。
5.数人のイタリア人に相談してみた
大学の教授などをはじめ、賃貸契約したことがある・物件購入したことがあるというイタリア人に書類を見せてみました。
もっともらしいことが書いてあるが、このようなフォーマットの書類は見たことないという意見がほとんどでした。
対処

1.弁護士に相談する
詐欺だと確信してすぐに、最初のやり取りから毎回相談していた知り合いのイタリア人の顧問弁護士に相談しに行きました。
内容的に見ても詐欺である可能性が非常に高く、すぐに警察に届け出た方が良いとのアドバイスを貰いました。
2.警察(Polizia Postale)に詐欺被害で届け出
弁護士にアドバイスをもらった翌日、早速オンライン犯罪を担当するPolizia Postaleに行きました。行った日は予約者しか受け付けてもらえない日でしたが、WhatsAppでのやり取りはすべてスクショし、送金した銀行の送金番号などの書類を持って翌日また来るように言われました。
翌日はすぐに調書を作成してくれました。Facebookの投稿URLや投稿者・大家とのWhatsAppでのやり取り・身分証明書・契約書・公証人や税務署の受領証などスクショやダウンロードしたすべてのデータは印刷し、かつデータをUSBに入れて警察に提出しました。
鍵の受け渡し日が迫っているけれど、今後の大家とのやり取りはどうしたらいいか確認したところ、これ以上はWhatsAppでのやり取りはやめること・無視してよい・鍵の受け渡し予定日にも行く必要はないと言われ、警察での手続きは終了しました。
3.銀行へ詐欺被害報告と調査依頼
もしかしたら、銀行が加盟している保険で、送金してしまったお金が補填され戻ってくるかもと思い、有料の調査依頼をしました。しかし、返金不可という結果でした。
アドバイス
当たり前に言われていることですが…
- 内見できない時点で信用できない
- どんな良物件でも、大家や同居人が信用できないと感じた時点で諦める
- 鍵の受け渡し前に絶対に金銭を支払わない
- 先に金銭を要求するような物件はこっちから願い下げだという気持ちで臨む
- 大家に直接電話してみる
- 言葉に不安があったのと、文章で証拠として残したかったので電話は一切しませんでした。
まとめ
今回は、住宅賃貸詐欺に遭った経験をご紹介しました。イタリアは詐欺大国です。イタリア人でも詐欺に遭うくらいです。
今回は警察に被害届を提出し終了しました。その後の進展は今のところ全くありません。操作されているのかも不明です。
私の金銭は諦めているので構いませんが、Ministero di Giustiziaなど公的機関を装った領収書を作成している点については悪質です。手の込んだ手口から、きっと国際的な犯罪組織なのでしょうが、逮捕・罪に問われることを願うばかりです。せめて国外追放にはなってほしい。パスポートや滞在許可証送らなかった判断をほめたいと思います。
今回の失敗は、直前にある日本人から「わざわざ時間を作って内見させる大家なんていない」と言われたことが大きかったと思います。また、家探しに焦っていたことも事実です。内見させない大家なんて信用できません。必ず退去時に揉めることでしょう。
焦らずとも、良い縁はきっとやってきます。私も最終的には良いアパートを見つけることができました。金銭的・精神的被害分以上の幸運に恵まれたと思っています。
今回は、金銭面よりも、詐欺とわかっていても警察に引き渡すまで逃げられないように会話を続けることが非常にストレスでした。
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